庭の主役として、毎年美しい花で梅雨の季節を彩ってくれるアジサイ。植えた当初は可愛らしいサイズだったのに、数年経つと「え、こんなに大きくなるの!?」と驚くほど立派に成長しますよね。
「通路にはみ出して歩きづらい…」
「隣の植物に影を作ってしまう…」
「家の壁に枝が当たるようになった…」
愛情をかけて育ててきたアジサイですが、手に負えないほど大きくなると、嬉しい反面、少し厄介な存在に感じてしまうことも。
ご安心ください。大きくなりすぎたアジサイは、あなたの「どうしたいか」という目的に合わせて、正しく剪定すればきちんとコントロールできます。
この記事では、「とにかく一度リセットして小さくしたい!」という場合と、「来年も花を見ながら、少しずつサイズを調整したい」という場合、2つの目的に合わせた剪定の裏ワザを、理由とともに詳しく解説します。
なぜアジサイは大きくなりすぎる?放置するリスクとは
そもそも、なぜアジサイはこんなにも大きくなるのでしょうか。
アジサイは本来、非常に生命力が旺盛な植物です。日本の気候にもよく合っており、適切な環境であれば毎年新しい枝を伸ばし、株全体がどんどん大きくなっていきます。これは、アジサイが健康に育っている証拠でもあります。
しかし、庭という限られたスペースでこれを放置してしまうと、いくつかの問題が出てきます。
- 病害虫の発生: 枝葉が密集しすぎると、内部の風通しが悪くなります。湿気がこもり、うどんこ病などの病気や、カイガラムシなどの害虫の温床になってしまいます。
- 景観の悪化: 株全体のバランスが崩れ、間延びした印象に。他の植物の成長を妨げることもあります。
- 物理的な問題:通路を塞いだり、隣家との境界を越えてしまったりと、生活への支障が出てくることも。
こうした問題を解決し、アジサイを健康で美しく保つためにも、適切な剪定によるサイズ管理は不可欠なのです。
目的別!大きくなりすぎたアジサイの剪定方法2パターン
それでは、具体的にどう剪定すれば良いのでしょうか。ここでは、あなたの希望に合わせた2つの方法をご紹介します。「理想の姿」をイメージしながら、どちらの方法が合っているか考えてみてください。
1. 【リセット重視派】来年の花は我慢!劇的に小さくする「強剪定」
2. 【花も維持派】来年も咲かせたい!少しずつ小さくする「間引き剪定」
それぞれの方法で、剪定する「時期」と「位置」が全く異なります。間違えると、花が咲かないまま何年も過ごすことになりかねないので、じっくり読んでみてくださいね。
【方法1】来年は我慢!劇的に小さくする「強剪定(リセット剪定)」
「もう形がどうしようもない!」「とにかく一度、コンパクトな姿に戻したい!」
そんな、リセットを最優先したい方におすすめなのが、この「強剪定」です。
覚悟しておくこと:来年の花は咲きません
まず、この方法を選ぶ上で最も大切な心構え。それは、「来年の花は諦める」ということです。
一般的なアジサイ(旧枝咲き)は、夏に花が終わった後、秋にかけて古い枝に来年の花芽を作ります。強剪定では、この花芽ごとすべての枝をバッサリと切り落としてしまうため、翌年は花が咲きません。
その代わり、春には根元から新しい枝がたくさん伸びてきて、株全体の若返りを図ることができます。そして、その新しい枝に再来年の花が咲くのです。一年間花を我慢する代わりに、理想のサイズと樹形を手に入れる、未来への投資と捉えましょう。咲かない理由を知っていればよかったのですが、私はかつてわからずに、なぜ咲かないのか悩んだこともあります。
一方、新枝咲きのアジサイは春になる前に剪定しても、初夏に花を咲かせることができます。安心してバッサリと剪定しましょう。
剪定時期:葉がすべて落ちた冬(11月〜2月)
強剪定の時期は、葉がすべて落ちてアジサイが休眠期に入る冬が最適です。
「なぜ花が終わった夏にすぐやらないの?」と疑問に思うかもしれません。ここには重要な理由があります。
植物は、葉を使って光合成を行い、生長するためのエネルギー(養分)を作り出しています。夏から秋にかけて、アジサイは葉でたくさんの養分を作り、それを枝や根に蓄えて、厳しい冬を越す準備をします。
もし葉が残っているうちにすべての枝を切ってしまうと、株は十分に養分を蓄えることができず、大きなダメージを受けて最悪の場合枯れてしまうことも。
ですから、アジサイが自力で葉を落とし、「しっかり養分を蓄えましたよ」というサインを出してから剪定するのが、株への負担が最も少ない、優しい方法なのです。
剪定位置:地面から20cm程度でバッサリ!
剪定はとてもシンプルです。休眠期に入ったアジサイの、すべての枝を、地面から20cmくらいの高さ(2~3節残した位置)で、思い切って切り戻します。最初は勇気がいるかもしれませんが、アジサイの生命力を信じて、ためらわずに作業しましょう。
春になると、切った枝の節や株元から、新しい枝がたくさん伸びてきます。その年に花が咲くことはほぼないので、剪定も必要ありません。それでも思ったより伸びた場合は、2~3芽下がって剪定しましょう。
【方法2】花も楽しみたい!大きさを維持・調整する「間引き剪定」
「来年もやっぱり花は見たい!」「でも、これ以上大きくなるのは困る…」
そんな、花とサイズの維持を両立させたい欲張りなあなたには、この「間引き剪定」を組み合わせた方法がおすすめです。
この方法は、一度に劇的なサイズダウンはできませんが、数年かけて少しずつ株を更新し、大きさをコントロールしていく、株への負担が少ないテクニックです。
手順1:長く伸びすぎた枝を「根元から」間引く
剪定の時期は花後すぐ、7月中旬頃までです。
花が色あせてきたら、株全体をよく観察してみてください。中には、ひょろっと一本だけ不自然に長く伸びた枝や、何年も花が咲いていないような古くて木質化した枝、内側で混み合っている細い枝などがあるはずです。
そうした「不要な枝」を選んで、根元からバッサリと切り落とします。 これが「間引き剪定」です。

こういった不要な枝は、古い枝であることがほとんどです。株もとをみると、新し枝が分岐していることがあります。その場合は、新しい枝を残して、不要な枝を切り落としましょう。(下画像参照)

手順2:基本的な「花後剪定」を行う
不要な枝を取り除いたら、今年花が咲いたすべての枝を、基本的なルール通りに剪定します。
「咲き終わった花から2~3節下の、元気な芽の上で切る」
この作業で、来年咲く花の数を確保します。葉っぱの根元に少しふっくらとしたものがあるのを残すと、来年の花が期待できます。
また、今年咲かなかった枝も同様に剪定しましょう。上の画像で登場しているの倒れこんでいる枝は、前年に咲かなかったので、剪定していなかった枝です。(これは私の失敗例です。)
重要なポイント:間引くのは全体の3分の1まで!
ここで絶対に守ってほしいルールがあります。それは、間引く枝は、株全体の枝数の3分の1程度に留めること。例えば、20本の枝があれば間引くのは6~7本にします。
たくさん切りたくなる気持ちは分かりますが、一度に多くの枝を切りすぎると、株がエネルギーのバランスを崩してしまいます。残した枝に十分に栄養が回らず、結果として来年の花が小さくなったり、咲かなくなったりする原因になります。
この「花後剪定+間引き剪定」を毎年繰り返すことで、
- 古い枝が新しい枝に更新され、株全体が若返る
- 内部の風通しが良くなり、病害虫を予防できる
- 株の大きさをコントロールしつつ、毎年花を楽しめる
という、まさに一石三鳥の効果が得られます。3年かければ、株全体のすべての枝が一度リフレッシュされる計算になりますね。
まとめ:理想の姿をイメージして、アジサイと上手に付き合おう
大きくなりすぎたアジサイの管理、いかがでしたでしょうか。
最後に、2つの方法をもう一度整理します。
とにかく小さくしたいなら「強剪定」
- 時期: 葉が落ちた冬
- 方法: 全ての枝を根元近くでバッサリ切る
- 結果: 翌年の花は咲かないが、株を劇的に小さくできる
花もサイズも維持したいなら「間引き剪定」
- 時期: 花後すぐの7月中
- 方法: 基本剪定に加え、不要な枝を全体の1/3程度、根元から切る
- 結果: 翌年も花が咲き、少しずつサイズをコントロールできる
アジサイは、私たちが思う以上に強くてたくましい植物です。剪定を怖がりすぎず、目的を持ってハサミを入れることで、もっと長く、美しく、あなたの庭に寄り添ってくれるパートナーになります。
ぜひ、この記事を参考に、あなたのお庭のアジサイと上手に向き合ってみてください。
最後までお読み下さりありがとうございました。
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