「一生懸命お世話しているのに、なんだか葉っぱの色が黄色くなってきた…」
「春に植えた苗が、夏になってもぜんぜん大きくならない…」
ガーデニングをしていると、そんな悩みにぶつかること、ありますよね。私も植物が元気をなくしてしまうと、何がいけなかったんだろう…と落ち込んでしまいます。
水やりも日当たりも問題ないはずなのに、なぜか植物が育たない。その原因、もしかしたら土の中の「窒素不足」、専門用語でいう「窒素飢餓(ちっそきが)」が原因かもしれません。
「窒素?なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、ご安心ください!
この記事では、ガーデニング初心者だった頃の私が抱いていたギモンに答える形で、「窒素飢餓」の謎を世界一わかりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、植物が出すSOSサインをしっかり受け取って、的確に対処できるようになっているはずです!
もしかして窒素飢餓?植物が出す3つのSOSサイン
まず、ご自身の植物が窒素飢餓に陥っていないか、チェックしてみましょう。植物は言葉を話せませんが、体を使って一生懸命サインを出してくれています。
【窒素飢餓の主なサイン】
- 下のほうの古い葉から黄色く変色してくる
- 新しい葉や茎の成長が止まったり、ひょろひょろしたりする
- 植物全体の生育が悪く、葉の色が薄い緑になる

特に重要なのが、「下の古い葉から黄色くなる」という点です。
窒素は植物にとって、人間でいうタンパク質のようなもの。新しい葉や茎を作るために欠かせない栄養素です。そして、窒素は植物の体の中で移動しやすい性質を持っています。
そのため、土から新しい窒素を吸収できないと、植物は「苦肉の策」として、古い葉にある窒素を分解して、新しく伸びようとしている先端部分(成長点)に送ろうとします。その結果、窒素を奪われた古い葉から黄色くなっていくのです。
もし、新芽や上のほうの葉から黄色くなっている場合は、鉄分不足など別の原因が考えられます。どこから黄色くなっているか、じっくり観察してみてくださいね。
一番のギモン:空気の8割は窒素なのに、なぜ足りなくなるの?
ここで、多くの方が「あれ?」と不思議に思うはずです。
「理科の授業で、空気の約80%は窒素だと習ったよ?こんなにたくさんあるのに、どうして植物は窒素不足になるの?」
これ、私もずっと不思議でした。
その答えをたとえるなら、「空気中の窒素は、カギがかかった巨大な金庫に入ったお宝」のようなもの。
空気中にある窒素(窒素ガス)は、2つの窒素原子がガッチリと固く手をつないでいる状態(三重結合)です。この結びつきは非常に強固で、ほとんどの植物はこの手をこじ開けて、窒素を直接利用することができません。金庫の扉が固すぎて開けられないのと同じですね。
植物が吸収できるのは、この固い結びつきがほどけて、アンモニウムイオンや硝酸イオンといった、水に溶けた状態の窒素だけ。つまり、誰かが金庫のカギを開けて、使いやすい形にしてあげる必要があるのです。
良かれと思ったその一手間が原因かも?
「でも、普通に土で育てているだけなのに、なぜ急に窒素がなくなるの?」
実は、ガーデニング初心者が良かれと思ってやったことが、かえって窒素飢餓を引き起こしてしまうケースが少なくありません。
特に注意したいのが、落ち葉や米ぬか、刈り取った雑草といった「分解されていない有機物」を土に混ぜ込むことです。
なぜ「未熟な有機物」が窒素飢餓を招くの?
土の中には、目に見えない無数の微生物たちが暮らしています。彼らは、土に混ぜ込まれた有機物(落ち葉や枯れ枝など)を分解して、植物が利用できる栄養に変えてくれる、いわば「土の中の料理人」です。
しかし、この料理人たちも、働くためにはエネルギーが必要です。彼らにとってのエネルギー源が、何を隠そう「窒素」なのです。
ここで、たとえ話をさせてください。
料理人(微生物)が、硬いお肉(炭素を多く含む有機物)を調理して、お客さん(植物)が食べられるシチュー(栄養)を作ろうとしています。
この硬いお肉を柔らかく煮込むためには、たくさんのコンソメ(窒素)が必要です。
キッチンにコンソメが足りなかったら、料理人はどうするでしょう?
そう、お客さんのためにテーブルに用意されていたコンソメまで「ちょっと貸して!」と使ってしまうのです。

これと同じことが土の中でも起こります。
落ち葉や米ぬかのように炭素分が多く、窒素分が少ない有機物が土に入ると、微生物たちはそれを分解するために、一時的に土の中にある窒素を植物から横取りしてしまうのです。
その結果、植物が使える窒素がなくなり、「窒素飢餓」が発生します。
土をフカフカにしよう、栄養を与えようと思って入れた落ち葉や腐葉土が、もし「未熟」なものだったら…皮肉にも、植物を飢えさせてしまう原因になるのです。
もう怖くない!窒素飢餓の解決策と予防法を3つのシーン別に解説
原因がわかれば、対策は難しくありません。あなたのガーデニングスタイルや、植物の状態に合わせて、ぴったりの方法を選んでみましょう。
【シーン1:即効性重視】今すぐ植物を助けたい!そんな時は「液体肥料」
「もう葉っぱが黄色くなってきている!とにかく早くなんとかしたい!」
そんな緊急事態には、即効性のある液体肥料(液肥)がおすすめです。
液肥は、すでに植物が吸収しやすい形の窒素を含んでいるため、水で薄めて与えればすぐに効果が現れます。人間でいえば、栄養ドリンクや点滴のようなイメージですね。
- 選び方: ホームセンターなどで手に入る、一般的な草花用や野菜用の液体肥料でOKです。成分表示に「窒素(N)」と書かれていることを確認しましょう。
- 使い方: 必ず製品に書かれている希釈倍率を守って、水で薄めてから与えます。濃すぎると根を傷める「肥料焼け」の原因になるので注意してください。水やり代わりに、数回に分けて与えるのが効果的です。
【シーン2:土づくりから】じっくり長く効かせたいなら「有機肥料」
窒素飢餓は、土の中の栄養バランスが崩れているサインでもあります。目先の症状を抑えるだけでなく、根本から土壌を改善して、植物が元気に育つ「ふかふかの土」を目指しましょう。
そこでおすすめなのが、「完熟」した有機肥料や堆肥です。
「完熟」とは、微生物による分解がある程度終わっている状態のこと。これなら、微生物が土の中の窒素を横取りすることはありません。むしろ、ゆっくりと土に栄養を補給してくれます。袋に「完熟」と明記されているものを選びましょう。
「じゃあ、米ぬかやコーヒーかすをそのまま混ぜるのはダメなの?」
はい、その通りです。それらをそのまま土に入れると、まさにこの記事で解説している窒素飢餓を引き起こす原因になってしまいます。でも、ご安心ください。しっかり「発酵」というひと手間を加えてあげれば、これ以上ない最高の有機肥料に大変身するんです。
実は私も、毎日出るコーヒーかすを捨てずに「ほったらかし発酵肥料」を作って、野菜を育てています。びっくりするほど簡単なので、興味のある方はぜひこちらの記事も覗いてみてくださいね。
⇒ 【捨てないで!コーヒーかすが絶品野菜を育てる「ほったらかし発酵肥料」に大変身】
もちろん、市販の油かす・鶏ふんなども窒素分を多く含む優秀な有機肥料です。土づくりの際に元肥として混ぜ込んだり、生育期間中に追肥として与えたりすることで、じっくりと効果を発揮します。
これらの有機物は、土の中の微生物のエサとなり、土壌環境そのものを豊かにしてくれます。長期的に見れば、病気や害虫に強い、健康な植物を育てることにつながりますよ。
【シーン3:自然の力で】エコで賢い裏ワザ「マメ科の植物」
「化学肥料はあまり使いたくないな」「もっと自然な方法はないかな?」
そんな方には、とっておきの裏ワザがあります。それは、「マメ科の植物」の力を借りることです。
エダマメ、ソラマメ、インゲン、クローバーといったマメ科の植物は、ちょっと特別な能力を持っています。
なんと、自力では使えない空気中の窒素ガスを、自分たちが使える栄養に変えてしまうのです!
もう少し詳しく言うと、マメ科植物の根には「根粒菌(こんりゅうきん)」という微生物が共生しています。
この根粒菌こそが、空気中の窒素を固定する(金庫のカギを開ける)ことができる、スーパーマンです。
- 活用法1:コンパニオンプランツとして
窒素をたくさん必要とするナスやトマトといった夏野菜の近くに、エダマメを植えてみましょう。エダマメが作り出した窒素のおすそ分けをもらって、野菜たちが元気に育ちます。 - 活用法2:緑肥(りょくひ)として
畑を休ませる期間や、花壇の土づくりの際に、レンゲやクローバーといったマメ科植物を育て、花が咲く前にそのまま土にすき込む方法です。天然の窒素肥料となり、土を豊かにしてくれます。
マメ科植物をうまく利用すれば、肥料代の節約にもなり、環境にも優しいガーデニングが楽しめます。
まとめ:植物の声を聞いて、もっとガーデニングを楽しもう!
今回は、ガーデニング初心者を悩ませる「窒素飢餓」について、その原因から対策までを詳しく解説しました。
【今日のポイント】
- 窒素飢餓のサインは「下の葉からの黄変」
- 原因は、植物が使える形の窒素が土からなくなること
- 未熟な有機物を土に入れると、微生物が窒素を横取りしてしまう
- 対策は「液肥」「完熟堆肥」「マメ科植物」を使い分けること
窒素飢餓は、決して怖いものではありません。
それは、あなたの植物が「お腹すいたよー!窒素が足りないよー!」と送ってくれている、大切なサインです。
なぜ元気がないんだろう?と原因を考え、植物の状態をじっくり観察すること。それこそが、ガーデニングの腕を上達させる一番の近道です。
植物の声に耳を傾け、彼らとの対話を楽しみながら、あなただけの素敵なガーデンライフを送ってくださいね!
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